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科学社会学会

セッション3:病・医療・生物医学

 3-1 誰が生物医学化を望んでいるのか?
   -
contested illnessにおけるループ効果の三項分析に向けて―

  野島那津子(大阪大学、日本学術振興会DC) 

 Contested illnessとは、身体症状を訴える患者が何らかの疾患があると主張するのに対し、医師はそれを医療的なものと認めない病をいう。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、線維筋痛症(FM)、過敏性腸症候群(IBS)などがcontested illnessに含まれる。こうした病には、患者の訴えを裏付ける生物医学的エビデンスが存在しないため、生物医学的知と患者の経験は衝突を起こすとされる。つまり、contested illnessは、患者の状態に対する医師の認識と患者の主張がかみ合わないために、論争の様相を呈するという理解が一般的である。
 しかし、報告者が行ったME/CFS及びFM患者へのインタビュー調査では、医師は必ずしも生物医学的知に拘泥せず、患者の状態を見て診断・治療を行っていた。他方、患者の周囲の人間は、患者が診断名を得た後も、病気の存在を否定したり症状を軽んじたりしていた。たとえば、ある患者は配偶者に対してME/CFSについて説明するものの、事あるごとに「医学的に証明されたわけじゃない」と病気の存在を否定されていた。患者の配偶者が意味する医学は生物医学であり、(生物)医学的に説明できない病気は病気足り得ない。
 Contested illnessをめぐる従来の社会学の議論においては、医師と一般社会の理解は一枚岩と見なされてきたため、患者の状態に関する医師と周囲の人間の理解のこうした齟齬は奇妙な印象を与える。しかし、概念の利用・理解においてタイムラグのある医師と公衆が、contested illnessに対して同じ見解を示すという前提こそ疑問に付されるべきである。報告者は、contested illnessをめぐる意味づけの構造を解明するにあたり、ハッキングのルーピング効果を用いた検討が有効であると考えるが、概念と対象だけでなく対象外の人も含めた三項の相互作用を検討する必要性を主張する。
  

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