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科学社会学会

セッション3:病・医療・生物医学

 3-2 日本における「自閉症」現象の構築と展開
  竹内慶至(金沢大学)

 現在、先進諸国において、自閉症スペクトラム(ASD:以下「自閉症」)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)をはじめとする、いわゆる発達障害が「社会問題」として注目を集め始めている。このような状況のなか、脳科学や精神医学、心理学などの領域では熾烈な研究競争が巻き起こり、毎日のように関連遺伝子や発現率の報告、心理療法の効果などに関する研究成果が報告されている。
 本報告では、特に「自閉症」に着目し、I・Hackingによるループ効果概念をベースに、社会現象としての「自閉症」にまつわる問題群が日本においてどのように構築され、展開されてきたのかについて検討する。
 ループ効果概念を用いた研究としては、Gil Eyalらによる『自閉症マトリクス』(“The Autism Matrix”)が知られている。同書は米国における自閉症発現率の急上昇に対して、いくつかの仮説を提示している。Eyalらによれば、自閉症発現率の急上昇の前提となる出来事として、精神遅滞の「脱施設化」があったという。そして直接的には精神遅滞からの「診断代替」として自閉症という診断名が用いられることにより自閉症発現率が上昇したという。さらに、診断代替の背景には、白人中流家庭の果たした役割や早期介入プログラム、特殊教育などの新たな活動家の担い手の参画があった。これらの複合的な要因が重なり、ルーピング過程が拡大・増幅して形成されたループ全体のことをEyalらは「自閉症マトリクス」と呼んでいる(Eyal et al.:2010)
 Eyalらの研究は「自閉症」の増加の背景にある社会的要因に関する有力な仮説を提起している。脱施設化や新たな活動家の参入などの仮説は日本においてもあてはまる部分もあるだろうが、全てがあてはまるわけではない。日本における自閉症の増加や「自閉症」にまつわる様々な社会現象の検討は別途必要である。本報告では報告者がこれまでに実施した聞き取り調査や収集した資料をもとに日本における自閉症マトリクスの一部を描き出すことを試みる。

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